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研究活動

研究プロジェクト

顎顔面頭蓋分子発生生物学を基盤とした歯科・口腔医学トランスレーショナルリサーチと関連歯科医療の展開

計画書

研究代表者
(所属)
高橋一郎(九州大学)
研究関係者
(所属)
森悦秀、野中和明、山座治義、春山直人、寺尾文恵、吉崎恵悟(九州大学)
研究期間 2014年4月~2015年3月
研究概要

 顔や口に表現型の現れる先天異常は、咀嚼、発音、呼吸、嚥下機能を障害し、患者の生命維持機能に影響を与えると同時に、特異的な顔貌を呈することから、社会的心理的活動に大きな影響を与え、患者の生活の質(quality of life: QOL)を著しく低下させる。顔面に表現型が現れる代表的な先天異常である口唇裂口蓋裂は、我が国では出生数500に対して1人、世界的にも700に1人と、世界で最も多い先天異常の1つである。この領域の研究者は、口唇裂口蓋裂を含めた顔面・口腔に表現型の現れる種々の先天異常の発生のメカニズムを解明するとともに、再生医学を応用した口腔機能創建治療法を開発することを目指している。
 本研究プロジェクトでは、分子発生生物学的研究を実施して顎顔面部、特に口唇や口蓋、あるいは歯の発生の分子基盤を解明するための基盤的研究を遂行すると同時に、骨置換材料を利用した口唇裂口蓋裂に伴う骨欠損の再生療法を開発するためのトランスレーショナルリサーチを実施する。これらによって、お互いに研究結果を補完し、基盤的研究の結果をトランスレーショナルリサーチに生かすとともに、トランスレーショナルリサーチにおける課題を基盤的研究により解明するレシプロカルな発展のプロセスを作り上げる。これらの研究活動を通じて、歯科医学研究の範囲にとどまらない国際交流ネットワークを構築することに貢献する。
 我々のグループの森らは、口唇裂口蓋裂治療が十分に提供されていないベトナムにおける歯科医療をボランティアとして提供してきた。しかしながら、術後に発症する不正咬合に帯する治療は十分に提供されているとは言いがたい。本年度は、その現状を調査し、その地域に必要な支援にはどのようなものがあるかについても検討を加えたい。

報告書

研究代表者
(所属)
高橋一郎(九州大学)
研究関係者
(所属)
森悦秀、野中和明、山座治義、春山直人、寺尾文恵、吉崎恵悟(九州大学)
研究期間 2014年4月~2015年3月
実績概要

 顔や口に表現型の現れる先天異常は、咀嚼、発音、呼吸、嚥下機能を障害し、患者の生命維持機能に影響を与えると同時に、特異的な顔貌を呈することから、社会的心理的活動に大きな影響を与え、患者の生活の質(quality of life: QOL)を著しく低下させる。本研究では、口唇裂口蓋裂を含めた顔面・口腔に表現型の現れる種々の先天異常の発生のメカニズムを解明するとともに、再生医学を応用した口腔機能創建治療法を開発することを目指す。このような目標の下、研究者の交流を図るため、NIDCRにおいてセミナーを開催した。また、本年度より、研究代表者がベトナム、ニンビン市ニンビン総合病院における口唇口蓋裂治療支援に参加し、森教授と共に手術支援を行い、さらに、患者の不正交合治療の相談や、現状の調査にあたった。
 本年度は USJI week の期間中にこれまでの活動成果の一端を紹介し、Prof. Slavkin (University of Southern California)を演者として、 National Institute of Dental and Craniofacial Research/National Institutes of Health(NIDCR/NIH)から関連領域の研究者を招いて、セミナーを実施した。
 関係分野において原著論文を発表した。

活動内容・
研究成果

 USJI seminar:開催地:NIDCR/NIH, Bethesda, MD, 開催日:2014年9月3日、対象者:NIH 等の研究者ならびに USJI 参加者、イベントタイトル:Craniofacial Translational Research Based on Molecular Craniofacial Developmental Research
Operating Adviser: USJI 九州大学 高橋一郎、
モデレーター: Dr.Yoshihiko Yamada,NIDCR/NIH
講演者:九州大学大学院歯学研究院教授 森悦秀(高橋が代理発表)、前 NIDCR director, NIH Prof. Harold C. Slavkin 南カリフォルニア大学歯学部、前NIDCR/NIH Director
高橋は、歯・頭蓋顔面生物学研究の現状の報告と、2014年3月のベトナムにおける口腔外科ボランティアの現状について報告した。
 Slavkin 教授は、歯科医学研究の現状と今後の展開について、再生歯科医療の展開や基盤的研究の推進が重要であり、これらの活動が、科学、科学技術全般のシンポに必要不可欠であることを提示した。

研究成果
Umeda M, Terao F, Miyazaki K, Yoshizaki K, Takahashi I.: MicroRNA-200a Regulates the Development of Mandibular Condylar Cartilage. J Dent Res. 2015 Mar. (in press).
Yoshizaki K, Hu L, Nguyen T, Sakai K, He B, Fong C, Yamada Y, Bikle DD, Oda Y.: Ablation of Coactivator Med1 Switches the Cell Fate of Dental Epithelia to that Generating Hair. PLoS One, 9(6): e99991, 2014 Jun.

Policy Paper

研究代表者
(所属)
高橋一郎(九州大学)
研究関係者
(所属)
森悦秀、野中和明、山座治義、春山直人、寺尾文恵、吉崎恵悟(九州大学)
研究期間 2014年4月~2015年3月

始めに

顔や口に表現型の現れる先天異常は、咀嚼、発音、呼吸、嚥下機能を障害し、患者の生命維持機能に影響を与えると同時に、特異的な顔貌を呈することから、社会的心理的活動に大きな影響を与え、患者の生活の質(quality of life: QOL)を著しく低下させます。最も高い頻度で発生する、口唇裂口蓋裂は500人に1人の割合で誕生し、最も頻度の高い先天異常の一つであると同時に、出生から成長期を通して、系統的な医療・歯科医療による支援が必要な疾患です。先進諸国では、口腔外科を基盤とし、小児科、小児歯科、耳鼻科などの連携により小児期を支え、形成外科や矯正歯科などが包括的に治療にあたる診療体系が整いつつありますが、発展途上国では、周産期を乗り越えることのできない子供達も数多く、医療支援はもちろん、社会基盤の整備に対する支援も必要です。私達、九州大学大学院歯学研究院を中心とする研究グループは、これらの先天的な問題を持つ子供達に対する種々の治療法の開発と、現在、利用可能な治療の提供を目的として、NPO法人と連携して海外の支援を必要とする地域での診療支援、ならびに種々の基盤的研究ならびにトランスレーショナルリサーチを行っています。これらの理念にしたがって、1.再生医学研究に関する情報発信、2.日米の研究者の交流と情報交換、そして、3.口唇裂口蓋裂の治療支援による国際貢献という三つの柱を中心として情報収集ならびに情報発信を行っています。

U. S. Japan Research Institute(USJI)は学術的な研究基盤に立ちながら、実践的な研究を展開し、現実のニーズに応えられる政策的含意を持った成果の発信を目指しています。USJI設立2年目から九州大学が加盟し、それと同時に、私達研究グループもその一員として活動を行ってきました。USJIにおける私たちの取り組みは7年間のプロジェクト研究ですが、その後も継続して発展していかなければなりません。私達の研究グループは、このプロジェクト研究が終了した後も、目標を設定して研究を継続し、さらに再生医療の実用化に向けた努力と、各分野への長期的な貢献を目指しています。

 

1.再生医学研究に関する情報発信

現在、再生医学、再生医療研究は世界中で行われ、数々の成果を上げています。iPS細胞の開発や利用はその際たるものであると言えます。同時に、ヒトES細胞や組織由来の幹細胞など、iPS 細胞以外の細胞を用いた再生医療の研究も行われ、九州大学大学院歯学研究院においては、医学研究院との連携により、乳歯の歯髄から採取した間葉系幹細胞を用いて種々の組織を再生する試みを展開しています。とくに、最近、小児の肝疾患に対する再生医療の開発に向けて細胞治療を行うための基盤となる基礎研究が開始され、将来の展開が期待されています。

一方、乳歯は子供の時にしか口腔内にありませんので、自分自身の再生治療には用いることができません。他家移植により第3者の治療に用いることは、これまでも行われておりますので、今後一般的な考え方になって行くと考えられます。しかしながら、自分の細胞で自分の組織を再生できるとしたら、非常に有効な再生治療となり得ます。こうした観点から脱落した乳歯から採取した細胞を冷凍保存する技術を開発する研究も行っています。これは、研究段階の治療法は、いつも想定通りに開発が進むわけではなく、また、状況によっては適用範囲が限られることなどもあり、シーズから臨床応用まで最低でも20年は要する長期的な取り組みを必要とするものです。したがって、我が国が主体となって行われているiPS細胞を用いた取り組みに対する支援はもちろん、再生医療の実現を目指す多様な取り組みに対して、基盤的研究やトランスレーショナルリサーチ、臨床試験などに対する系統的支援を、これまでにも増して日米両国が行っていく必要があると考えます。

私達の研究チームでは、私達の研究の成果ばかりでなく、日米でのこうした研究に対する取り組みの進展について、USJI weekを通して定期的に情報発信を行っていきます。

 

2.日米の研究者の交流

私達の研究チームには1990年代から現在に至るまで、米国の National Institutes of Health (NIH)に留学し、ポスドクを経験した研究者が数多く含まれ、現在でも共同研究を続けています。また、USJI における取り組みにおいても、NIH のNational Institute of Dental and Craniofacial Research (NIDCR)の研究者の支援を受けUSJI weekにおけるセミナーを開催しています。以前は、日本の若手研究者が、日米両政府の支援を基盤とした大学からの支援やNIHからの支援を受け、研究者としての教育を受けると共に、研究の進展に大きく貢献していましたが、現在、そうした経済的支援が縮小していることもあり、十分な連携研究が行われていません。私達の研究チームでは、こうした研究者交流を再活性化し、より質の高い研究を実施するために、日米の研究者交流に積極的に貢献していくことを目指しています

九州大学大学院歯学研究院においては、本USJI プロジェクトの連携研究者の1人である小児歯科・巣終えシャルニーズ歯科の野中教授を中心としてアジア環太平洋再生歯科医療実現化コンソーシアムを創設し、研究者間の連携をより深めると同時に、研究の進捗に貢献することを目指しています。

こうした研究者交流についても、その現状と成果を USJI weekセミナーなどのあらゆる機会を捉えて、情報発信していきます。そして、日米の若手研究者が、より強く連携し、質の高い研究成果を上げるための政府による支援のこれまで以上の重要性を訴えます。

 

3.口唇裂口蓋裂治療における国際貢献

私達の研究チームは、本プロジェクトの連携研究者である九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面外科学分野の森悦秀教授が所属する日本口蓋裂協会との連携活動の中でベトナム共和国のニンビン市、ニンビン総合病院における口唇裂口蓋裂治療の支援をサポートしています。日本口蓋裂協会のこの活動は、これまで12年にわたって行われてきましたが、昨年から、USJIの運営アドバイザーが、自身の研究分野の若手教員ととともに、矯正歯科医としてチームの診療支援活動に加わりました。初年度の昨年は、ニンビン総合病院における医療支援活動に関する情報収集を行い、本年度は、ニンビン総合病院の歯科医師ならびに医師、看護師等に対して、口唇裂口蓋裂患者に対して行う成長期の不正交合治療の重要性を訴えました。こうした活動は、草の根活動ですが、根気強く継続していくことが成果を生み出すための手段であると考えています。こうした取り組みは、これまでの所、欧米や日本の各団体が、個別の使命感をもって実施しており、横の連携は十分に構築されていません。この横の連携を作り、より質の高い取り組みへと深化させていく必要があります。日米両政府に対して、このような取り組みと取り組みに対する草の根的支援の重要性を訴えると共に、広く民間に情報発信し、こうした活動に対する賛同者を集め、より高度な支援を実施できるように努力していきます。

 

最後に、

私たちの研究チームは、あたかも独立した3本の柱に支えられ、活動しているように見えるかもしれません。基盤的研究を基礎として新たな医療技術の開発を実施し、その適用を世界の隅々まで行き渡らせるには、途方もない時間がかかります。途上国における医療現場からの最新情報と、最新の研究情報に耳を傾け、全ての領域における関連情報の収集を行いながら、それぞれの地域の特徴に合わせた最適な支援を実施していく必要があります。USJI は歯科医学研究と歯科医療の現場を結び、再生医学研究の場から臨床応用の場へ知識と技術をつなぐ私たちのこの様な取り組みに賛同し、様々な支援をしてくれています。

一方で、私たちのチームは USJI の活動の中で、唯一の歯科医学研究のグループであり、その特異性や特徴を活かして、口腔の健康を通してQOL の改善を目指すことの重要性をアピールし、USJIの活動に貢献し、ひいては世界の人々の口腔の健康を実際に改善していくための政策的取り組みの重要性を提案していきたいと考えています。

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