HOME > 研究活動 > 研究プロジェクト > 2019年度 > 米国議会の動向から検証する米中対立と日米関係への影響

研究活動

研究プロジェクト

米国議会の動向から検証する米中対立と日米関係への影響

計画書

研究代表者
(所属)
中林美恵子(早稲田大学教授/USJI運営アドバイザー)
研究関係者
(所属)
Daniel Bob(Visiting Scholar, Edwin O. Reischauer Center for East Asian Studies, The Johns Hopkins University’s Paul. H. Nitze School for Advanced International Studies)
研究期間 2019年9月 -2020年3月
研究概要

 本研究では、行政府以上に強大かつ安定した権限を発揮する米国議会の動向から、米中対立と日米関係への影響を検証する。

米国の関税発動により本格化した米中貿易戦争は、現時点で落とし所が見当たらない。米中新冷戦時代とも言われるようになり、国際社会は大きな転換期を迎えている。2019会計年度国防権限法はその好例である。
米国の動向は行政府だけを見ていたのでは全体像がつかめない。国防権限法の作成は、議会の軍事委員会が担当し、委員長主導のもとで作成されて本会議へ提出する。上院と下院で意見が食い違えば、それぞれで審議を重ねる。委員会でも本会議でも修正案が討議される。出身州などにより利害が全く違う議員たちが協議をするので、法案をまとめるには相当な苦労を要する。その結果、「海外企業による米企業の買収や合併などを審査する機関の権限強化」「米政府機関は2019年8月から中国通信大手ZTEやファーウェイなど5社のサービスや機器を使用禁止。2020年8月からは5社製品を使う企業との取引も打ち切り」「2年に一度の環太平洋合同演習(RIMPAC)への中国の参加禁止」「中国語教室『孔子学院』(米国大学などに110設置)が、米国の教育機関に資金提供をすることに制限」などが盛り込まれた。更に、RIMPACへの中国の参加禁止には禁止措置の解除についても記載しており、「中国が南シナ海諸島でのすべての埋立地を放棄し、開発を停止し、兵器システムを除去することを条件」としている。
特筆すべきは、この法案に対する議会での投票結果である。下院では賛成359、反対54。上院では賛成87、反対10。党派を超えて、圧倒的賛成で通っている。仮にトランプ大統領が拒否権を発動しても、乗り越えるだけの票数である。こうして議会は、2019会計年度国防権限法によって、中国への強硬姿勢を先鋭化させた。
また議会では、トランプ大統領への懸念が浮上していることも事実である。上院の歳入委員会委員長はアイオア州選出のチャック・グラスリー(共和党)であり、「議会は大統領に権限を与えすぎた。大反省をしなければならない」とする。トランプがカナダ・メキシコに対して通商拡大法232条に基づく関税賦課を適用させた際に、グラスリーは「友好国に対して、しかも安全保障を理由に関税をかけるなど、あってはならない」と怒りの声を上げた。グラスリーは大統領から232条を剥奪すべく画策していた。2019年3月には大統領の通商拡大法232条を制限する法案を起草し、12人の共和党上院議員が賛成を表明していた。
 更には、議会が1977年に大統領に与えた国際緊急経済権限法(IEEPA)も懸念されている。歴代の大統領は緊急時にはこれを使用し、現在も29件が有効である。トランプ大統領もイランや北朝鮮への制裁をはじめとして、IEEPAを多発している。
 2012年以来、議会の支持率は10%台を推移しており、最近20%台に微増した程度だ。トランプ大統領がワシントンを「泥沼」と呼び、「徹底的にぶちのめす」という趣旨の発言をしても、それは民意から大きく外れているわけではない。確かに国民はワシントンのインサイダーや政治のプロ、エリートたちを嫌う傾向がある。議会内部が国民からみて不透明かつ複雑であるため、利益団体が議会を動かしていると多くの国民は信じている。エリートたちは、トランプを「政治を知らない素人」と毛嫌いするが、だからこそトランプを支持する国民は少なくない。
 そのような現実が確かに存在する一方で、議員の多数を纏めいかねばならない(分かりづらい)プロセスだからこそ、法的な安定性を与える議会の重要性と動向は、もっと注意深く観察・分析されなければならないのである。大統領の言動や目立つ政策が注目されがちである昨今、研究対象としての議会は、ますますその重要性を増している。
 したがって本研究では米議会に着目し、提出された法案や議員の動向、委員会の審議過程を分析し、安全保障を含む米中摩擦の実態や、それによる日本への影響を含めて考察し、今後の米国の方向性について検討を加える。

ご支援のお願い

Upcoming Events

February 24 - March 3 and March 12, 2020
USJI Week registration coming soon !!
  • 連携大学

  • GET UPDATES

    USJIでは、イベント等の情報をメール配信しています。お申込み/配信停止はこちらから。